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ランチェスター戦略 弱者・強者の戦略とは?

NPOランチェスター協会理事 名和田 竜
公開日 

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Relation-Stage 代表
NPOランチェスター協会理事 副研修部長 ランチェスター戦略学会幹事
相模女子大学 非常勤講師
マーケティング、フレームワークを考えるときに飲むコーヒー
ペン 仕事で使うパソコン

「ランチェスター戦略」のベースとなっているのは、「ランチェスター法則」と「ランチェスター戦略モデル式」であるということはこちらの記事でお話しましたが、この2つが実際にビジネス市場で勝つ為にどの様に応用、活用されていったのか?

具体的に見ていきましょう。

故田岡先生は、ランチェスター法則から「弱者」「強者」の戦い方の方向性を導き出し、ランチェスター戦略モデル式(クープマンモデル)からは、シェア理論を導き出しました。

では一体、「弱者の戦い方」すなわち「弱者の戦略」とは何か?
また、「強者の戦い方」=「強者の戦略」とは何なのか?

この弱者と強者の戦略について説明していきたいと思います。

「弱者の戦略」と「強者の戦略」

まず、ランチェスター戦略では、弱者には弱者の取るべき戦略が有り、強者には強者の取るべき戦略が有ると明確に示しています。
そして、その戦い方は180度異なります。

ではどう違うのでしょうか?

まず、「弱者」の基本となる戦略は「差別化戦略」です。
これは皆さんよく聞く言葉かと思います。

「他と同じことはせず、違うことをやりなさい・・・。」

このようなアドバイスを受けたことは一度や二度ではないのではないでしょうか?
意味としては、ランチェスター戦略においても変わりありません。

また、「強者」であればその基本となる戦略は「ミート戦略」となります。
「ミート戦略」については一言付け加えておくと、これは、「同質化戦略」あるいは「模倣戦略」ということを意味します。

つまり、「強者」というのは、「弱者」が取る戦略に対し、同じ戦略を取るということがその戦略セオリーとなるわけですね。

「マネる」ことで、相手の「差別化」を「差別化」で無くしてしまう、「同質化」してしまうことで、そのインパクトを薄める、あるいは無くしてしまう・・・。
いってみれば、後出しジャンケンのようなものですね。これも立派な戦略というわけです。

但し、これは強者の立場にのみ可能な戦略ともいえます。
実際皆さんも目の当たりにしているのではないでしょうか?

「強者の戦略」の具体例

1つ具体例を挙ると、麒麟ビールの発泡酒「淡麗」などは、非常にわかりやすい例といえるでしょう。
元々、発泡酒カテゴリーに最初に参入したのは、サントリーの「ホップス」でした。
その後、サッポロなども参入しますが、丁度発泡酒市場が世間に認知され、いよいよ市場がおいしくなってきたその時に、満を持してキリンは参入していきます。
そして、一気にそのカテゴリーにおいて他のブランドを飲み込んでしまいました。

もともと、ビールではアサヒと1,2を常に争う立場です。

残念ながら、ビール市場においては、この2強とサントリー&サッポロとは差があります。

実際に顧客もそのような捉え方をしていることは否めません。

したがって、キリンの強者としての販売力・商品力・ブランド力などが他社を凌駕することを見越した戦略だったと言えるではないでしょうか。
まさに典型的な強者のミート戦略といえますね。

このように強者は、新しい市場が生まれた際はしばらく静観し、その市場の可能性や成長性を見ていきます。その後、市場性を感じれば一気に参入し、その市場を押さえてしまう戦略に打って出ます。
もちろん、新しい市場に限らず、既存の市場においても弱者が差別化してきた商品やサービスに対し、強者は自分の市場を守るために「ミート」していくのが定石といえます。

当然これは体力がものをいう戦い方ですので、「強者」側が圧倒的に有利な戦略です。
したがって、これを「弱者」がやったところで、利益を出していくことは厳しいどころか、下手をすると経営困難に陥ってしまします。
このことは、しっかり覚えておきましょう。

「弱者」と「強者」の定義とは

さて、先程から私は、「弱者」「強者」という言葉を頻繁使っておりますが、何をもって「弱者」なのか?あるいは、「強者」なのか?
皆さんは、どの様な意識でこの言葉を使われていますか?
 
会社の規模が小さければ弱者? 大きければ強者?
売上が大きければ強者? 小さければ弱者?
何となくイメージで? 大手は強者、中小零細企業は弱者?

・・・いえいえ、そうでは有りません。
ランチェスター戦略では、ここでも明確な定義付けをしております。
先ほど、ランチェスター戦略の「判断基準は市場シェアにある」ということを触れましたが、実はこの「弱者」「強者」の判断も市場シェアによって決まるということを覚えておいて下さい。

まず強者についてですが、ランチェスター戦略では、ビジネス市場において市場シェア1位の企業のみを「強者」と定義し、それ以下は2位であろうが、3位であろうが皆「弱者」と定義しています。(店舗型ビジネスの場合、地域一番店のみを強者。それ以下は全て弱者。)
この辺りは、皆さんの認識とちょっと違ったかも知れませんね。

したがって、先ほどのビール市場を見ていきますと、業界全体の1位はアサヒビールとなりますので、この市場の強者はアサヒビールということになります。
2位はキリンビールです。キリンとアサヒは僅差では有りますが、立場的には2位のキリンは弱者となります。もちろんそれ以下のサントリー、サッポロも弱者となります。

但し市場シェア1位というのは、何を持って判断するのか?
そもそもシェアそのものを理解しておかないとこれも良くわかりませんよね?

市場シェア(市場占拠率・占有率)というのは、ある特定の市場全体の総売上高を市場規模と捉え、その市場規模を分母にして、各社の売上をそれぞれ分子としたものを指します。
つまり、同じフィールドでビジネスを展開する競合も含めた売上高を全て足したものが分母となり、その中での自社の売上を分子として表したものです。
競争の結果得られる市場の中での自社と競合との地位関係といっても良いですね。

※ちなみにシェアに関しては売上だけとは限らず、生産台数、出荷数、販売台数、契約者数など業界やその目的によっても異なりますのでご注意ください。

いずれにせよ、自社がビジネスをしている市場という「パイ」を自社がどれだけ取れているか?
これを把握しておかなくてはなりません。

その際、重要な判断材料は、市場全体の経営規模では有りません。その判断は、自社がビジネスをしている市場の局面ごとで判断するということになります。
この意味わかりますか?

市場の局面ごととは、自社と競合との「競争の各局面」という意味です。
すなわち、自社がビジネスをしている市場全体だけをみていくということではなく、部分的な局面も含め見ていくということが重要になります。

例えば、コンビニを例に挙げてみてましましょう。
まず、コンビニ業界全体における市場という観点で観ていけば、日本全国という視点で観なくてはなりません。その時の強者は、全国の売上規模、店舗数など圧倒的な強さを誇り、1位に君臨しているセブンイレブンということになります。
しかし、これは日本全国という市場で観た場合を意味します。

例えば、これを地域ごとに観ていくとどうでしょうか?
北海道という局地的な局面を見てみると、これはセイコーマートという地場のコンビニが店舗数などで、1位となっています。
また、群馬であればセーブオンがお膝元ということも有り、その地域で強さを発揮しています。

地域という括りだけではなく、単品カテゴリーという視点でも同じことが言えます。
例えば、ソフトドリンクという市場全体で見ると、日本コカコーラが業界シェアNO.1ですが、緑茶という単品カテゴリー(部分的な局面)で見ると、これは伊藤園の「お~いお茶」が1位となります。
したがって、この局面で判断すると、強者は日本コカコーラではなく、伊藤園ということになりますね。
では、ウーロン茶ではどうでしょう?
こちらはサントリーが1位なんですね。ですので、サントリーが強者ということになります。

それでは、先ほどのビール市場に戻って観てみましょう。
全体ではアサヒビール。
局地的に観ていくと・・・北海道では、サッポロビールが強者。沖縄では、オリオンビールが強者となっています。
また、カテゴリーに目を向けると・・・プレミアム領域では、サントリーのプレミアムモルツが強者となります。
そして、発泡酒、第3のビールでは、それぞれキリンの「淡麗」「のど越し生」が強者となります。

いかがでしょう? おわかりになりましたか?
このように、市場を「全体」という大きな括りだけで観るのではなく、「競合局面」という「部分」の視点を持って観ていくことが求められます。

つまり、ランチェスター戦略が定義する「弱者」「強者」は、市場の競合局面ごとにその立場も入れ替わるというわけですね。
ですから必ずしも大企業、大手企業が「強者」とは限りません。
商品、地域、流通、顧客によって、「弱者」・「強者」の立場は当然変わってきます。
したがって、シェアという概念も業界、全国といったシェアだけが基準ではないという発想を持つことが必須なのです。

ここまで明確に「強者」「弱者」の定義付けをしているのは、競争戦略論の中でもランチェスター戦略だけといっても過言ではないでしょう。

でもちょっと待って下さい。
なぜ、そこまで「弱者」「強者」にこだわるのか?
そうです!先程ふれました通り、「弱者」と「強者」では、その取るべき戦略が180度異なるから他なりません!
したがって、本来「弱者」の立場なのに「強者」の戦略をとってしまったらどうなるか?
セオリーとは、真逆のことをしてしまうわけですから、当然悲惨な結果が待っている可能性が高いわけですね。
逆も然り。
但し、「強者」が「弱者」の戦略をとってしまう方がまだましと言えるでしょう。
チャンスロス程度で済むわけですから。
まずは、自社の事業を細分化し、各競合局面において、「弱者」なのか?「強者」なのか?
これをしっかり認識し、戦略自体の誤りが無いよう心掛けていきましょう。


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