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ランチェスター戦略の基礎理論、市場シェア理論とは?

NPOランチェスター協会理事 名和田 竜
公開日 

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Relation-Stage 代表
NPOランチェスター協会理事 副研修部長 ランチェスター戦略学会幹事
相模女子大学 非常勤講師
マーケティング、フレームワークを考えるときに飲むコーヒー
ランチェスター戦略のシェア理論
ペン 仕事で使うパソコン

ランチェスター戦略では、市場シェアで1位であれば強者。
それ以外は皆弱者ということは既にお話したとおりです。
まずは、自社の置かれた立場を知り、弱者であれば弱者の戦略。
強者であれば強者の戦略をとっていくことが基本となります。

市場シェアからみえる戦略

さて、「市場シェアとは何か?」・・・これについての説明は既にさせて頂きました。
市場シェア(市場占拠率・占有率)は、その市場規模を分母にして、各社の売上をそれぞれ分子としたものでしたよね。
つまり、同じフィールドでビジネスを展開する競合も含めた売上高を全て足したものが分母となり、その中での自社の売上を分子として表したものです。

また、シェアにはもう1つ、販売数量を示す「フローベースのシェア」と設置数、稼働数などを示す「ストックベースのシェア」というものがあることも覚えておいて下さい。
※消耗品はフローで捉える。耐久財など長年使うものはストックで捉えるのが一般的。

◎市場シェア=自社の売上げ(販売数量)/その市場規模(自社と競合他社の合計)

但し、ここで重要なのは、どこまでを競合と見なすか? という部分です。

この判断は、あくまでも顧客視点で! ということがポイントです。
自社が競合と思っていなかった商品やサービスが、実は顧客から観た際に同じ選択肢として括られていたならば、当然それは競合と見なくてはなりません。

例えば、マクドナルドと言えばファーストフードという業界に括られますが、チェーン全体という視点で観ると、その競合は同じ業界よりも、今やコンビニや牛丼チェーン店、あるいはカフェチェーン店などを強く意識しています。
もちろん店舗型ビジネスなので、部分の視点で観ると、その地域のエリア内の店舗をもっとも重要視しなくてはなりませんが、その際も飲食店だけが競合ではないということを知っておかなくてはなりません。
皆さんもお腹が空いた際は、飲食店以外にもコンビニの弁当、おにぎりなども選択肢に入ってきますよね?
その際に、そのエリア内にどういった選択肢があるか?
実際はこれがリアルな競合となってきます。

また、最近のコンビニの店頭で販売しているセルフ式のカフェなどは、まさに近隣のカフェチェーン店や自販機などからも顧客を奪ってますよね?
家電量販店なども最近一番意識している競合は、ネット通販の「アマゾン・ドットコム」だといいます。
もちろん逆も然りです。

いずれにせよ、顧客の視点という判断基準をしっかり持っておくことが必須であるということを忘れないでください。

話をシェアに戻しましょう。

皆さんは、その市場においてシェアというのは、どの程度取ることが望ましいと考えていますか?

100%? 90%? 80%? ・・・・・ザックリ半分の50%くらい?

どの様な目標や基準を持って取り組まれていますか?

実は、シェアはどの程度取った方が良いのか?
あるいはどこを目指すべきなのか?

こうした目標設定においても、ランチェスター戦略では、明確な数値を設定しています。
短期目標や中長期の視点に立ち、シェアアップ目標値を設定し、それを実践していくことがランチェスター戦略の1つの目的であり、その達成度が成果指標ともいえます。

その基準値となる数値は、「73.9%」、「41.7%」、「26.1%」の3つとなります。
これをシェア3大目標数値と言います。

実務の上では、「75%」「40%」「25%」と覚えてしまっても問題は有りません。

さて、この目標数値は世界のマーケティング論を見渡しても非常に珍しい、ランチェスター戦略ならではオリジナルのものとなります。
ちなみに、ランチェスター戦略学会初代会長であり、マーケティング理論において現代の日本をリードする明治大学大学院の上原征彦教授も「ここまで具体的な数字を提示している競争戦略論は無い」とハッキリおっしゃっていました。

では、一体この目標数値はどこから導き出したものなのか?

実はこの数値こそが、クープマンを始めとするOR(米国作戦研究班)が導き出した「ランチェスター戦略モデル式」を故・田岡信夫先生と斧田太公望先生が、さらに解析し導き出したものなのです。
いわゆる「田岡・斧田シェア理論」ですね。

一部ではクープマンが導き出した「クープマン目標数値」等とも呼ばれ、クープマンが導き出したものと誤解も有るようですが、クープマンらはあくまでも戦争時におけるモデル式(方程式)を導き出したのであって、ビジネス及び市場シェアに関する数値は全て田岡、斧田両氏によるものということも付け加えさせて頂きます。

シェアの3大目標数値

◎上限目標数値:「73.9%」

ランチェスター戦略では、シェアの最終目標数値を約75%と定めています。
100%では有りません。
その市場において、75%のシェアを取ってしまえば勝負は終了します。
100%を目指すわけではないんですね。
100%とは、完全独占状態ですので、実は危険な常態でも有ります。
実際のビジネスの現場をイメージしてみて下さい。
例えば、取引先を考えてみるといかがでしょう?
1社依存体質であると、何かの時に非常に危険ですよね?
少なくとも本来企業は、常に2社以上の取引先をつくることを心掛けるべきです。
健全な市場というのは、常に競争がある状況をいいます。
1社独占は市場の拡大も見込めませんし、活性化も期待できません。
複数の競争状況がある中での75%という数字が最も安定し、ランチェスター戦略でいう独占状況といえるわけです。

◎安定目標値:「41.7%」

通常ビジネス市場で、70%を超えるシェアという数字は早々取れるのもでは有りません。
したがって、「独走の条件」といわれる数値である、40%をシェア目標としている企業が多いといいます。
実際、この数値を超えると大抵は1位になれます。しかも、2位との差も開いた1位となるパターンが多いので、その地位は安定します。
ランチェスター戦略でも最も重要視するのが、この市場シェア約40%という数値なんですね。

また、米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)社は、1965年から20年間に渡って取ってきたポートフォリオ戦略では、「競争相手が40%以上、自社が7%以下のシェアしかない場合商品は撤退すべし」としていました。
日本でもトヨタや日本生命などは、40%を市場シェア率の絶対目標としていたことも知る人ぞ知る話です。
実際、1位企業の市場シェアが41.7%を上回ると、国内で58.8%、世界では100%の確率でNO.1になっているということも統計データから見ることが出来ます。(日経シェア調査から福永雅文氏による分析)

◎下限目標値:「26.1%」

この数値は、トップの地位に立つことができる強者の最低条件を意味します。
もちろん、市場によって20%や10%程度でも1位になるケースはあります。
但し、その場合多くは2位以下とのシェア差は僅差で有るといえます。
25%でも、まだまだ安定的な地位とは言えず、いつ逆転されるかわからない状態ではありますが、実際統計データを見ると、25%程度のシェアを取るとシェア1位であるケースは多く、2位以下であることは少ないといえます。
したがって、「26.1%」は強者として取りたい最低条件のシェアとなるわけですね。

余談ですが、これは後にコロンビア大学のグリーンワルド達によっても論じられています。
「20~25%のマーケットシェアを取らないと、まともにその市場では戦えない」
(「ハーバード・ビジネスレビュー」2005年9月号)
詳細は割愛しますが、故田岡先生はこれより30年近く前にこのことを世に発表しているということに驚かされますね。

以上が、田岡・斧田両氏により導き出された、「シェア3大目標数値」となります。

目安となる「4つの目標数値」

さて、先程「3大目標数値」について見て参りました。
ここからは、まだまだ3大目標数値に至らない、立ち位置にある企業が目指すべき、シェア目標値について解説していきたいと思います。

その目安となる数値は4つとなります。
「19.3%」、「10.9%」、「6.8%」、「2.8%」
この4つの数値は、故・田岡信夫先生が、中間目標値の意味合いで示したものです。
まだ「26.1%」には及ばない企業であれば、まずは立ち位置を把握し、この4つの目標数値から、自社が目指すべきシェア数値を設定して頂ければと思います。

◎上位目標値:「19.3%」

約19%というシェアは、ドングリの背比べ状態の中で上位グループに入れたことを示す数値です。
弱者の中の強者といった位置づけですね。
したがって、弱者の当面の目標数値といえるでしょう。

※導いた計算式⇒(26.1%x73.9%)

◎影響目標値:「10.9%」

約11%というシェアは、その市場全体に対し影響を与える存在になることを意味します。
「10%足がかり」などとも言われています。
この辺りから、その存在を意識され、強者や上位競合との本格的な競争が始まるので
しっかり覚えておきましょう。

また、ランチェスター戦略学会で研究テーマともなりました、シェアと利益の相関性という
視点で見るとシェア10%未満は、シェアと利益は相関しないが、10%を超えると相関し始める
という研究結果も出ています。ある意味、赤字と黒字の分岐点とも言えるわけですね。
非常に重要視したい数値といえるでしょう。

※導いた計算式⇒(26.1%×41.7%)

◎存在目標値:「6.8%」

約7%のシェア率というのは、市場へ対しての影響力は有りません。
競合にようやく存在を認められる程度に過ぎないといえるでしょう。
先に挙げたGEなどは、7%未満を撤退の基準として使用していましたよね。
市場特性や期間を考慮しつつも撤退の1つの基準として捉えてよい数値といえます。

※導いた計算式⇒(26.1%×26.1%)

◎拠点目標値:「2.8%」

約3%のシェア率は、存在価値はないに等しいことを意味します。
市場参入時のまさに拠点目標として捉えるべき数値となります。
したがって、約3%まではランチェスター戦略では、市場参入戦略を適用し、
それ以上からから競争戦略を適用していきます。

※導き出した計算式⇒(6.8%×41.7%)

以上が「4つの目標数値」となります。

そして、先にあげた「3大目標数値」とこの「4つの目標数値」を合わせた
目標値をランチェスター戦略では、「7つの目標シンボル数値」と呼んでいます。

※7つのシンボル数値図5

3:1の法則(サンイチの法則)と射程距離理論

ここまで、シェアの持つ数値の意味合いについて見てきました。
では、自社を含めた各社の市場シェアは他にも何か意味合いはあるのか?
あるいは数値を知ることで、他にどう活かせるのか?
この辺りも解説して起きたいと思います。

「3:1の法則」(サンイチの法則)

皆さんは、「3:1の法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

「人よりも3倍の努力をすれば必ず結果がついてくる・・・」
「3対1の状況(相手より3倍差)であれば必ず勝てる!」

こんなことを言われたことはありませんか?

2倍では、やはりまだ危うい。
3倍くらいの努力や差を付ければ、間違いなく結果がついてくる・・・
これは人々が昔ながらの経験値から得た知恵として言われ続けている言葉かと思います。
「3人集まれば文殊の知恵」なども近い意味といえるでしょう。

それこそ戦国の世では、武田信玄などは、この法則を忠実に守り、戦をしていたと言われています。
三方ヶ原での徳川家康との合戦などは良い例といえるでしょう。

さて、ランチェスター戦略においても、この敵の3倍の兵力で戦えば、まず間違いなく勝てるという
「3:1の法則」(サンイチの法則)をシェア理論に応用した考え方があります。
もっとも、ランチェスター戦略の場合は、科学的根拠に基づいた考え方では有りますが・・・
その考え方、「射程距離理論」について説明致しましょう。

「射程距離理論」

ランチェスター戦略のシェア理論の中には、射程距離理論という考え方があります。
上限目標値「73.9%」と下限目標値「26.1%」を足すと100%になりますよね?

シェアを2社間で争っていたとすると、一方が「73.9%」のシェアを抑えた時、もう一方のシェアは、「26.1%」になりますよね。

そのシェアの比は「3:1」となります。

「73.9%」という数値は、シェアの上限目標数値。すなわち完全決着のゴールです。
つまり、2社間の勝敗の分岐点は、「3」という数字がポイントとなるんですね。

これは、3対1以上に力関係が開いた場合、完全に決着が付いてしまうことを意味します。
このことを「射程距離理論」いいます。

但し、3倍という数字が当てはまるのは、2社間競合と単品の顧客内シェアの場合のみとなります。
それ以外は、ランチェスター第二法則が適用される状況下になるので、兵力数が2乗倍に作用します。
よって、2乗して3倍となる√3倍(約1.7倍)を射程距離とすることを覚えておいて下さい。

まとめると、2社間の一騎討ち型の戦いや単品の客内シェアの場合(局地戦/第一法則型)は、相手とのシェア差を「3倍」つければ逆転困難な安全圏ということになります。

但し、3社以上が競合する広域戦・確率戦(全国区・地域別・商品別・販路別等・・・通常のビジネスはほぼこちらが適用)は、第二法則型が適用されますので、兵力数が2乗に作用します。
したがって、2乗して3倍となる「√3倍」(=約1.7倍)が射程距離ということになります。
その逆に、射程距離が√3倍未満であれば十分逆転が可能ということになります。

このようにシェアというのは、単純に自社の立ち居地を把握するだけではなく、自社よりも1ランク上の企業との差、または1ランク下の企業との差がどの程度なのかを「射程距離理論」を用いることで認識することが重要となります。

その際、逆転可能なシェア差なのか?(射程距離「圏内」)
それともほぼ無理なシェア差なのか?(射程距離「圏外」)
このことをしっかり認識することが重要となります。これによって、目標数値がより明確になり、次の打ち手も見えてきます。

ここで注意しておきたいことが1つ有ります。
「射程距離理論」は、1位と2位の差だけではなく、2位、3位などの差も含め、全ての競合関係に適用されます。
シンボル目標数値の場合、業界や競合状況によって使用しにくい場合がありますが、射程距離理論の場合は、自社との上位又は下位企業とのシェア差に適用できますので、ランチェスター戦略の実践においては、特にこちらを重要視しています。

シェアを知ることは、自社の立ち位置を知るのみならず、他社とのシェア差間を「射程距離圏内」なのか?「圏外」なのか?これを認識することでもあるわけです。

5つの市場競争パターン

さて、これまで見てきた「3大目標数値」と「射程距離理論」から、市場の競争パターンは、5つに分類することが出来ます。

1つ目が、「分散型」市場。
これは、1位の企業が下限目標値の「26.1%」以下で、競合各社間のシェア差が√3倍以内。
つまり、突出した企業が無い、ドングリの背比べ状態をいいます。

2つ目が、「3強型」市場。
1位、2位、3位のシェアを足したものが「73.9%」以上を占め、かつ1位が2位と3位を足したシェア以下であり、さらに1~3位の各社間は√3倍以内の状況をいいます。
いってみれば、勝ち組み3社とその他負け組の状況ですね。

3つ目が、「2強型」市場。
1位と2位の企業を足したシェアが、「73.9%」を超え、且つ1位と2位のシェア差が √3以内。 
この場合は、2強状態とその他負け組みの状況を指します。

4つ目が、「1人勝ち型」市場。
1位の企業が「41.7%」を超え、1位と2位の企業とのシェア差が √3倍以上。
こちらは、シェア状況が「41.7%」を超えているナンバーワン企業とその他負け組の状態をいいます。

5つ目が、「独占型」市場。
こちらが最後となりますね。1位の企業が「73.9%」を超えている状態にある市場を言います。
1位以外は、基本的には皆負け組み状態といえます。

仮に分散型から市場状況がスタートした場合、何の戦略もなしに戦っていると、やがて自然淘汰が始まります。そうなると時間の経過と共に「1~5」のパターンへと推移していきます。
つまり、勝ち組が減り、負け組が増えていく形になります。
したがって、シェアを把握する場合は、現状の競争パターンも認識し、次のパターンへ移行することを前提に自社の目標順位を設定する必要性が有るわけです。

「分散型」であれば、いずれ「3強型」になることを想定し、上位3位以内に入っておくことが求められます。
この場合、4位だと負け組になってしまいます。
「2強型」であれば上位2位に入っていなければ、やはり負け組みになってしまいます。

自社と他社のシェアを知ると、自ずと自社は何位以内に入るべきかが明確になるわけです。
同時に攻撃目標もどこに定めるかも見えてくるわけですね。

自社と上位企業・下位企業とのシェア差間を把握し、上との差が射程距離圏内であれば、
十分上位を狙っていくことも可能ですが、まずは、下位との差を見ておく必要が有ります。
やはり、下との差が、圏外(√3倍差)まで引き離せていないのであれば、こことの差を引き離しておく必要があります。

しかし、多くの企業は、射程距離圏外であっても、上位企業と勝負してしまいがちです。
人間の心理からいっても、下よりも上を目指したいので、そちらに目がいくのは当然ではありますが、その際にやはり、下位とのシェア差が十分でなければ、下位企業から足元をすくわれてしまうという事態も有り得るわけですね。
したがって、まずは下位とのシェア差間はどの程度なのか?
まずはそこから見ていきましょう。

「攻撃目標」(自社りも下位の企業)と「競争目標」(自社よりも上位の企業)は、切り離して考えていくということですね。
シェアについては、目標数値の認識とシェア差間ここをしっかり把握することを心掛けましょう。


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